打ち上げから20年目
カリーナ星雲
2010_04_22
 今月24日にNASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)が打ち上げから20年目を迎える。記念すべき節目に合わせて,迫力のある最新画像や動画,HSTのこれまでの歴史がつまった新しいウェブページなどが公開された。
 カリーナ星雲に見られるガスの複雑な構造の拡大画像。
 1990年4月24日にHSTを搭載したスペースシャトル「ディスカバリー号」(STS-31ミッション)が打ち上げられた。以降,今日までの20年間に,HSTは多くの成果をもたらし,宇宙論から惑星科学にいたる現代天文学のほぼすべての分野において,わたしたちの考え方を大きく変えてきた。
 主鏡の不具合や搭載機器の故障に見舞われたり,予定していた修理ミッションが延期されたりしたこともあったが,HSTに関わる研究者やエンジニアの努力,昨年5月に実施された修理ミッションで行われた船外活動などによって,見事な回復を遂げた。今では,以前にも増して鮮明で示唆に富んだ画像の提供が可能となり,研究者や一般の人々の興味が尽きることはない。
 NASA科学ミッション局の副長官をつとめるEd Weiler氏は,「ハッブルは間違いなく,史上もっとも認められ,もっとも成功をおさめた科学プロジェクトの1つです。昨年行われた修理によって,能力も最大に達し,社会にインパクトを与えるような科学的成果をもたらす,新たな観測が始まりました」と話している。
 HSTがこれまでに観測した天体の数は3万個以上,撮影してきた画像の数は50万枚を超えている。とくに昨年の修理ミッションで,HSTは打ち上げ時に比べて100倍も強力な望遠鏡に生まれ変わった。20周年記念で公開された画像には,巨大な星形成領域であるη(エータ)カリーナ星雲の一部がとらえられている。 ちりを含んだ水素などのガスが,まるで巨大なタワーのように星雲の壁から伸びている。この画像は,HSTが1995年に撮影した有名な「わし星雲」の巨大な柱を思い出させるが,見た目の迫力はすば抜けている。
 ガスやちりの柱は長さが3光年ほどで,近くに存在する高温の星によって侵食されつつある。また,柱の先端には生まれたばかりの赤ちゃん星が隠れている。その星から宇宙空間に向かって放出されているガスやちりのジェットが,まるで矢の先のように見えている。
 一般の人々が自宅にいながらにして研究の一環に参加できる機会も提供される。宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)では、ボランティア参加型の銀河分類プロジェクト「The Galaxy Zoo」に携わる研究者と提携して,HSTの視野にとらえられた銀河をインターネット上でアマチュア天文家が分類するプロジェクトを進めている。参加者は,ハッブル・ディープ・フィールドにとらえられた数千個の銀河を,渦巻き,楕円,不規則の3種類に分類する。銀河が分類されることによって,銀河どうしの関連性の研究が可能となり,銀河形成に関する理解が深まると期待されている。
 
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